なぜ、「大切な子ども」は地元を去ってしまうのか?

キャリア支援

「若者の流出を食い止めたい!」— この声は、よく地域やニュースでよく耳にします。対策として「働く場の確保」「賃上げ」などが叫ばれていますが、本当にそれだけで、流出は止まるのでしょうか?

キャリア支援の観点からこの問題を見つめると、それは「単に仕事やお金だけの問題ではない」と感じずにはいられません。

特に私たち親世代は、「自分の子どもをこの地域に残したいか?」という視点から、この問題を非常にリアルに感じています。

今、企業では50代をターゲットにした早期退職が進んでいます。一方で、地域社会では若者流出が止まらない。

高齢化が進む地域には、長年の経験を持つベテラン層(40代・50代・60代)が潜在的にいるにもかかわらず、その方々の「働く場」も「再活躍の場」も少ないのが現実です。

若者を呼ぶこと、定着、流失ばかりに注力し、今地域にいる人材や、やむなくリタイアした人材を有効活用できていない。このアンバランスさが、地域全体の活力を低下させているのではないでしょうか。

もちろん、賃金は重要です。しかし、「賃金を上げれば若者は残る」という考え方は、地域の持つより本質的な問題を見えなくしている気がします。

私たちが本当に心配なのは、子どもたちが「自分の未来がこの地域で見えない」と感じてしまうことではないでしょうか。

先日、地元から都心で長く活躍されていた若い方が、Uターンで戻ってこられた時のエピソードを聞きました。その方は、こんな風に感じたそうです。

「地域に戻ってみて、新しいことを取り込もうとしない雰囲気と、既存の人材が有効活用されていない現実に、強い閉塞感を感じました。ここでは自分の成長が止まってしまう。やはり都心に戻ることを決めました。」

彼らが求めているのは、「自分の能力や新しいアイデアが活かせる場があるか」、そして「世代や肩書きに関係なく、地域をより良くしていこうという熱意と仕組みがあるか」、ということ。

ベテラン層から若者まで、地域にいるすべての人材を「地域の宝」として捉え直す視点が必要です。

  • 長年の経験を持つ方々が、新しい事業を始める若者のメンターになる。
  • ベテランが持つネットワークと、若者の新しい技術や視点を組み合わせる

子を持つ親として、私たちは自分の子どもに「未来を感じられる場所」を残したいと心から願っています。若者が流出しない地域とは、単に「仕事がある」場所ではなく、「未来への期待」という体温が高い場所です。

私たちようなベテラン層が、自身のキャリアチェンジとして地域での新しい活動に参加してみるのも一つの方法です。

子どもたちに「ここに残ってほしい」と口で言うだけでなく、地域の大人たちが、楽しそうに、そして前向きに挑戦している姿を見せることが、何よりのメッセージになります。

「失敗を恐れず、新しいことを受け入れる柔軟な雰囲気」を私たち自身が作り出すことが、若者が「ここは面白い」「自分も成長できる」と感じる土壌になるはずです。

若者流出の問題は、私たち全世代のキャリアと生き方に直結しています。

多くの自治体が移住定住策として「子育て世代の優遇」「住みやすさ」を重要視します。確かに、それは移住の初期段階では重要です。

しかし、子育てを終えた後、移住した人自身が「長くそこで生き生きと働き続けられる場所」がなければ、子どもが成長した途端、また都市へ流出してしまうことになります。

子どもたちが将来を見据えたとき、「ここに自分の能力を活かせる仕事がある」「この地域の大人たちは生き生きと楽しそうに働いている」と感じられること。

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